理事長挨拶

有馬 孝禮 (東京大学名誉教授) 「住生活基本法」が施行されて以来、住宅に関する基本政策は「良質な住宅をつくり、よく手入れを行い、長く大切に使う」という方向になりました。そして「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」(2008年)によって、この新たな価値観を具現化するこれらの住宅のあるべき姿が明確になりました。これに続いて、「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」(2010年)も全会一致で成立し、施行の段階にあります。これらの法律には、木材を利用することが地球温暖化の防止、循環型社会の形成、森林の有する国土の保全、水源のかん養その他の多面的機能の発揮及び山村その他の地域の経済の活性化に貢献すること等が掲げられています。
 これらの法・制度の整備が進められるなか、とくに木造住宅の普及、とりわけ国内の地域材を有効に活用し、地域の経済や産業の発展に寄与する「地域型住宅」という概念が生まれました。
 さらに東日本大震災の発生や次なる地震災害に対する「減災」の観点が加わったことで、地域が一体となって災害に強い住宅を開発・普及していくという流れがいっそう強まってくるとおもわれます。
 このような地域の課題に対処するためには、これらの担い手であるとともにコミュニテイーの一員として長期にわたり寄与する存在が必須であります。それはほかならぬ地域の工務店であります。居住者の暮らしを守るべく日常において住宅を維持管理し、適切なリフオームを行い、万が一地震災害等が発生した際にも迅速に復旧に対応できるような工務店を支援し、育成することは「街の基本インフラ」を整備する公共事業であるといっても過言ではありません。しかしながらそのような工務店は年々減少し、高齢化し、厳しい事業環境、経営状態に直面していることも少なくありません。地域の工務店が「街の基本インフラ」として、その役割を担えることができるよう、地域の住宅生産に貢献する事業者の協力・連携体制を構築し、最新の情報提供、技術の普及、人材の育成が図れる環境を創造することが重要と考えられます。
 このように住宅・建築物における木材利用促進は資源生産の場である森林から、木材、木造建築、そしてその生活、保存、解体までの同世代相互関係にある「空間的連携」と、世代を超えた木材資源の更新や建築物の維持管理や補修など「時間的連携」の両側面を有しています。それにはまず一歩を踏み出し、謙虚に粘り強く対処しなければなりません。
 「一般社団法人 木と住まい研究協会」は地域住宅産業関連諸団体等と連携し、適切な役割分担のもと、木材産業、住宅産業の専門家・団体が参集し、住宅等の建築物への積極的な木材活用の推進を図り、もって循環型社会の形成、将来にわたる住生活産業、住生活の向上・発展に寄与するよう互いに研鑽したいと思います。

有馬 孝禮 (東京大学名誉教授)

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